『  スウィート・スウィーツ ― (1) ―  』

 

 

 

 

  −  そこは   お菓子の国  だった ・・・ !

 

 

 

悪夢などという甘っちょろい言い方ではとてもとても − な日々を

なんとか掻い潜り ・・・  ここに辿り付いた。

 

「 旧友がおってな。 とりあえずここに逗留する 」

 

ドクタ―・ギルモア モニター上の地図を差し

相変らず冷静沈着な表情で言った。

「 ― 了解。 港はある? 直接接岸 可能か? 」

メイン・パイロットの赤毛も 無表情に返す。

「 今 調査中だよ。  ・・・ う〜ん 上陸は夜間の方がいいかな 

「 もう少し接近したら 詳しくナヴィするわ。 」

「 よろしく。  時間、あるからゆっくりできるよ 」

「 あら そう?   穏やかな海みたいね 」

レーダーと分析を担当する黒人青年と金髪娘の声は こころなしか

弾んでいるふうに聞こえる。

ずっと張り詰めていた空気が  ほんのすこし緩んできていた・・・

 

    ゴーーーーーー     ドルフィン号のエンジン音も快調だ。

 

「 ほな おいし〜〜御飯、つくりまっせぇ〜〜 」

太った料理人は 意気揚々と厨房に消えた。

「 ほう ・・・?  トウキョウに近いのかね?

 なかなか興味のある国であるからな ・・・

 有名シアター もあるからなあ これは興味深々 」

俳優氏は 早速検索エンジンを開いた。

「 ウマいモノはあるかなあ〜〜 銘酒はなにか ・・・と 」

なんとなくざわざわし始めた艦内で ― 

 

      「  あ  

 

サブ・パイロット席から 声が上がった。 呟きに近い小声が。

「「  え ??  」」」

ほぼ全員が その声の主に視線を送った。

別に 素っ頓狂な大声 ではない。 むしろ小声だ。

周囲の雑音の中に 吸収されても不思議はない程度のモノ だったが。

 

     ?? なんだ???  ネズミかあ??

 

     あ    コイツかあ〜 

     へえ〜〜〜  声 あげたりするのか〜

 

赤毛は自動操縦を確認してから しげしげと隣席を見つめた。

 

     え。 なになに〜〜〜?

     あ。 もしかして知ってる土地なのかな

 

     え〜〜〜 うっそ〜〜〜

     大きな声、だすのぉ??  へえ〜〜

 

レーダーと分析担当二名も 驚きを隠さない。

艦内は いわば 静かに騒然と?した雰囲気になった。

 

 ― なぜなら。

 

サブ・パイロット席の新人は 担当業務にはとても熱心に取り組み

初めて という戦闘でもなかなかの手腕を発揮していた が。

ほとんどの時間 サブ・パイロット席に 黙って座っているのだ。

 

「 おい 交代だ、休憩に入れ 」

赤毛のパイロットが いささか乱暴に言っても

「 休憩時間だ。 キャビンに、戻れ 」

司令塔である銀髪が 半ば命令口調で言ったときも

 

     あ  ぼく。 あの  ここで ・・・ 

 

新人は もそもそと口の中で呟くだけだったのだ。

 

「 ―  009。 なにかあったのか 」

銀髪が皆の視線を背負って? 尋ねた。

「 あ   え  いえ  なんでも ・・・ 

「 なにかあったから声を上げた のではないのか 

 報告しろ 」

 

「 え  ・・・ あ  あの〜〜〜〜〜

 あの  ―  ぼくの母国で  この近くにいたんだ ぼく 」

 

     え〜〜〜〜〜〜〜 ???

     へえ〜〜  マジかあ〜〜

     うっそぉ〜〜〜〜 このコ ジャポネ なの??

 

コクピットで皆が声をあげた。

「 ! それを早く言え。 それなら地理には詳しいんだな? 」

「 あ ・・・ うん  はい 」

「 着岸地点を調べて 最適な場所を示せ。

 そして周囲の状況を ― 人家の状態などを報告だ 」

「 りょ りょうかい ! 

 あ・・ うん  あの辺りなら 誰もいないと思うけど・・・

 特に夜とかはね 」

「 < 思うけど > ではなく確実性の高い正確な報告をしろ 」

「 あ ごめ ん ・・・ 」

新人は 慌ててレーダー画面と現地映像のモニターを覗きこんだ。

 

 

< そこ > に上陸し、しばし逗留する、と決めたのは

旧友 の勧めによるものだ、とドクター・ギルモアは言った。

サイボーグ達が その人物に実際に出会ってみると ― 

ドクター・ギルモアの旧友 ― コズミ博士 ― は実に気のいい・・・

そして頭脳明晰 素晴らしい科学者だった。

 

みかけは好々爺なので 地元でも 長い間大学のセンセイ として

人望もあり このことはサイボーグ達にとってとても有益なこととなった。

 

  コズミ先生のご紹介なら〜〜  ええ 喜んで(^^

 

こんな言葉をいろいろな場所で聞き、好意的な笑顔に迎えられた結果

― コズミ邸での滞在中 ドクター・ギルモアは

沿岸の崖地を購入することを決意した。  

 

「 ほっほ  あそこの地主サンとは旧知の仲じゃからな〜〜

 快諾してくれたじゃろ? 」

「 ああ コズミ君の紹介状を出したら 即決じゃったよ。

 あそこを買ってくれるだけでもありがたい とな 」

「 そりゃ〜〜 三方得 ということじゃな 」

「 三方?? 」

「 地主サン に 君。 そして ワタシもだよ。

 近隣に旧友が住んでいる、というのはまことに嬉しいことさ 」

「 ― コズミ君 ・・・ 」

「 いやあ また楽しい日々が巡ってくるなあ〜

 時に みなさんはどうなさる? 

「 ああ ほとんどのメンバーは母国に帰る と。

 ここに共に住むのは ワシとジョー。 しばらくの間 イワン。

 あと フランソワーズも希望してくれたよ 」

「 ほうほう  あの茶髪君とお嬢さん とな〜〜〜

 そりゃいい・・・  よかったなあ 」

「 ふふふ   まあ しばらく 家族団らん を楽しむさ 」

「 よいよい ・・・ 穏やかな生活を楽しみたまえよ 」

「 ― ありがとう ! 本当に 」

「 ほっほ・・・ そしてなあ またあの学生時代のように

 時間を忘れて議論しようじゃないか 」

「 おお いいなあ〜〜  うん うん 楽しみにしている! 」

 

そんなこんなで ― まあいろいろあったが

ドクター・ギルモアは その土地に本拠地を構えることにしたのだ。

何と言っても 海に直接出られるのが最大の利点であった。

地上は 少々古風な広い洋館、 そして地下は深く格納庫を持つ。

 

「 諸君らの部屋はちゃんと確保してある。

 いつでも帰ってきておくれ。 待っておるよ 」

そんな言葉を土産に 多くの仲間達は祖国に戻る決心をしていた。

 

 

 ― そんなある日 ・・・

 

「 ふうむ ・・・ そうか 」

英国紳士は しばらくモニターでなにやら地図映像をながめ

手元の路線図などを調べていたが ・・・

やがて ぽん、と手を打った。

 

「 なるほど  ・・・ ヨコハマ か。  よしよし 」

彼は勢いよく立ち上がると 私室に戻っていった。

 

そして ― 半時間の後

 

「 あ〜  ちょいと出掛けてくるよ 」

 

俳優氏は 意気揚々と階段を降りリビングに入ってきた。

「 マドモアゼル?  もし お時間がありましたら

 吾輩とデートしていただけんか 」

「 え?? デート? 」

「 左様。  港ヨコハマ をご案内いたしますぞ 」

「 え ええ ・・・ でも わたし 服が ・・・ 

 外出着って持ってないのよ 」

「 ああ ああ 構わんよ。 コートを羽織って行けばいいさ。

 ヨコハマにはなかなか洒落たテーラーがあるぞ 」

「 え・・ でも ・・・ 」

「 ドクタ―からもなあ マドモアゼルにお洒落着を、と頼まれておるのさ。

 そして 吾輩の服も見たてていただけんかな 」

「 え〜〜  わたしが?  い いいの? 」

「 もちろん。 ああ 若いヤツらはそこいらの量販店で求めれば済むが

 紳士に令嬢となると そうは行かん。 」

「 うふふふ ・・・ なんだか楽しそうね 」

「 ほっほ その笑顔だよ マドモアゼル。

 眉間に縦じわ は そなたには似合わんさ  

「 ・・・ グレート ・・・ メルシ ・・・ 」

「 まあ 一応吾輩の姪 ということでお願いしたい 」

「 了解。  伯父様? 」

「 そうそう その調子だ。

 店の検索なんぞをしているから ― 半時間で用意できるかな? 」

「 します!  待ってて〜〜〜 」

 

   ダダダダ −−−−   彼女は階段を二段跳びしていった。

 

「 ほ・・・ 003 にも加速装置が搭載されているのか〜 」

 

  ふんふん〜〜〜 グレートはハナウタ混じりにスマホ検索を開始した。

 

 

 さてさて  ある晴れた早春の昼下がり―

 

グレートは フランソワーズを連れヨコハマ・モトマチに繰り出した。

彼が本国で馴染みだった老舗テーラーの日本支店に 足を延ばした。

そこで、氏のファンだ、という英国人の支配人と熱い握手を交わし

そして  欧州から来たばかりの姪っこ に レディの服装一式 を調達。

その後は港に近い老舗ホテルのテイー・ルームでアフタヌーン・テイを楽しんだ。

 

テイー・ルームの古風な欧州調のインテリアはこの二人の背景に

まことにしっくりとし  一幅の絵画にも見えた。

( 実際 隅の方ではこっそりスケッチブックを広げているヒトもいた )

高い天井に 芳醇な香りが漂ってゆく。

 

「 ・・・ あ おいし ・・・  いい香ね〜〜 伯父さま 

「 左様 左様  これは 本場モノの茶葉だな 」

「 ティ ってこんなに美味しい飲み物だったのねぇ 

「 ふっふっふ  認識を改めていただけましたかな 

「 はい 伯父さま。  ・・・ ケーキも美味しい〜〜〜 

「 ああ まったく。  これはこの国のオリジナルだな〜〜

 クリームの具合は芸術的だ 

「 そうね そうね  あ〜〜〜 おいし〜〜い♪ 」

パリジェンヌは年齢相応の笑顔で ケーキを平らげてゆく。

 

      ― そうだよなあ ・・・

 

      のんびりテイ・タイム なんて生活とは

      ずっと無縁な日々だったからなあ

 

グレートは この年下の仲間が不憫で仕方がないのだ。

彼女もまた 舞台芸術に関っている、という事情も加わり

なんとか 応援したい、と密かに願っている。 

 

「 なあ マドモアゼル。 この国は ― とくにこの辺りは

 暮らしやすいはずだ ― 我ら ガイジンさん には な 

「 ガイジンさん ?? 」

「 左様。 外国人のことだが  なに、どこの国でもいいのさ。

 ミナト・ヨコハマ が近いからなあ 古くから外国人を受け入れている。

 まあ 異国人に慣れているのだろうね。

 あのテーラーも このホテルも 本店はロンドンだ。 」

「 まあ そうなの? 」

「 帰りにモトマチ商店街を見てゆけばいい。 

 マドモアゼルの国の店も 多いはずだよ 」

「 ・・・ え  そう??  パリの店もあるかしら?? 」

「 ― うん  ・・・ ここは若いモノ同士の方がいいかな。

 アイツを呼び出そう  跳んでくるよ 」

「 ・・・ ジョー のこと? 」

「 ほうほう さすがにピンとくるかな?

 奴さん、この地域の出身だ、と言っておったからな〜〜

 案内役 兼 ボデイ・ガード には最適さ 」

「 うふふ  009がボデイ・ガードなら安心ね 」

「 と 思いたいが。  とにかく地理的には任せられるよ。

 一緒にウィンドウ・ショッピング するもよし・・・

 ああ Gap とかもあるから ヤツに服を見たてておやり 」

「 あらあ〜〜  うふふ・・・ そうねえ

 いっつも同じトレーナーにジーンズ ですものねえ 」

「 だろう? こちらも頼む 」

「 はあい。  あ グレートは? 」

「 うむ。 県民ホールの近くに 知り合い主宰の劇団があってな

 ちょいと顔をだしてくる 」

「 まあ すてき! いってらっしゃい。

 ・・・ また 舞台に立てるといいわね 」

「 ありがとう。 マドモアゼル  お主もだよ 」

「 え ・・・ 」

「 ・・・ 」

名優氏は に・・・っと笑い 令嬢の手を恭しく取ると

軽くキスをした。

 

 

「  お ・・・ おまたせ〜〜〜〜〜 」

はたして茶髪ボーイは本当に息せき切って 髪を振り乱してやってきた。

「 ジョー ・・・ え  まさか走ってきたの? 」

「 はっ はっ  はっ・・・  う  うん ・・・

 ひゃ〜〜〜 ここの駅 ホームが最地下だってこと、忘れてたあ〜 」

約束の時間の五分前に、文字通り < とんできた > ジョーは

私鉄の改札口で 大息を吐いている。

「 ・・・ 大丈夫?  まさかエスカレーター・・・

 全部 駆け上がってきたの? 」

「 う  ん ・・・ 時間  おくれない ようにって・・・

 はっ はっ・・・  きみがひとりで まってるから ・・・ 」

「 ありがとう!  ねえ どこかで少し休む?

 あ ほら・・・ あそこに すたば があるわ 

「 ・・・ え ・・・ あ〜〜 もう大丈夫・・・

 スタバってさ 高いからもったいないよ。  は〜〜〜〜

 うん もう平気さ。 ねえ どこへ行きたいのかな ? 」

「 あ  ちょっと待ってね・・・ 」

フランソワーズは 自販機に駆け寄った。

「 え〜〜と レモネードとかあるといいんだけど・・・・

 これは おちゃ ね。 こっちは ・・ ぼす ってなにかしら??

 あ なとかレモン ってこれ きっとレモネードね 

黄色いペットボトルを買うと 彼に差し出した。

「 これ・・・ 飲んで一息ついてください。 」

「 ひゃあ〜〜 ありがと〜〜〜  うわあ 久々だなあ〜 」

ジョーは笑いながら イッキにボトルの半分を飲み乾した。

「 〜〜〜〜ん〜 すっぱうま〜〜  あは ありがとう! 」

「 ・・・ すご ・・・ 」

「 ?? なに? 」

「 え あ ううん ・・・ それで よかった? 」

「 うん 美味しいよ〜〜〜  

 ねえ グレートからフランスのスウィーツ店を案内しろって

 言われたんだけどぉ    ぼく  よくわからなくて 」

「 あ あのね ここ・・ ず〜っといろいろなお店がならんでるから

 見てゆきたいなあ ・・・って 」

「 あ いいね〜〜  ウインドウ・ショッピングには慣れてるよ 」

「 まあ そうなの? ジョーはこの街に詳しいの? 」

「 あ〜〜 そうじゃなくて さ

 ぼく お金なかいからいっつも < 見るだけ > 」

「 ・・・ あ そうだわ! まずね 最初に 一緒に行きましょ 」

「 え あ いいけど ・・・ 」

「 さあ こっちよ〜〜〜 」

「 う うん あ あ〜〜 

フランソワーズは くすくす笑いつつ彼を改札口に近い Gap の店内に

引っ張っていった。

 

 ― しばらくして。

 

しち〜ぼ〜い と 金髪のお嬢さん がモトマチの舗道を歩いてゆく。

「 ・・・ え え〜〜と こっちでいいかな 」

「 ええ ありがと。 

 うふふ・・・ ジョー そのパーカー、似合ってる〜〜 」

「 あ そ そっかな〜〜〜  えへ あったかいし〜 

 フランって選ぶの、上手だね〜〜 オトコ物でもさ 」

「 ああ わたし 兄がいるから・・・

 よくね一緒にショッピングいったりしてたの。 」

「 あ そか ・・・  えへへ なんか嬉しいな〜〜

 ぴったりサイズのって あんまり着たことないんだ  」

「 え ・・・ どうして? 

「 う〜ん ほら ぼく、教会の施設で育っただろ?

 寄付の衣類とかの中から だいたい合うサイズのものを

 選んで着てたから さ 」

「 ・・・ そう ・・・ 」

「 ふんふ〜〜ん♪  あ あそこにチョコレート屋があるよ 」

「 え どこ ・・・ まあ ゴデイバ だわ!

「 あのチョコって フランス製なの? 

 なんかさ〜〜 一粒づつ売ってて ホントにチョコ?? って 

 思ってんだけど ・・・ 値段も 」

「 あ〜 あれはねえ ベルギーのチョコレートなのよ。

 パリでもね 一粒づつ売っていたわ。 」

「 ふうん ・・・ 高級チョコかあ  買う? 」

「 ん〜〜〜 いいわ ウィンドウから眺めて楽しむわ 」

「 いいね! なんかさ アクセサリーみたいだね 」

「 ふふふ ホント!  わたしも食べたことってほとんどないのよ 」

「 そっか〜〜  へへ こうやって眺めてるのも楽しいね 」

「 ね♪ 」

 

くすくす笑いながら ショッピング・ロードを並んで歩き

国際ストア で フォーション や コ・テ・ドール の

チョコレートを見つけた。

「 わあ〜〜 これ 好きなの! 買ってもいいかしら 」

「 いいよぉ〜 もちろん!  あ これ 象のマーク? 

 へえ おもしろ〜〜 」

「 そうなのよ〜〜  わりと手軽な値段でしょ 美味しいの! 

「 うん うん 」

乳製品のコーナーでは パリジェンヌは目を輝かせた。

「 きゃ〜〜  キ・リ のフロマージュ〜〜

 あ ラ・バッシュ・キ・リ のもあるわあ〜〜〜 」

「 え これチーズなの??  キューブみたいだねえ 」

「 うふふ あのね これ全部味が違うのよ 」

「 へ〜〜〜〜 あ このマークの牛、笑ってる〜〜 」

「 でしょ?  ほら これはハム味 こっちは ペッパーよ 」

「 ふうん ねえ いろいろ買おうよ 」

「 ええ    あ クラッカーも買ってゆくわ。

 ワインと一緒に楽しめるわ 

「 ・・・ お酒?  ・・・ ぼく 未成年なんだ 」

「 お家でなら いいんじゃない?

 ワインはお水とあまり変わらないわよ 」

「 へ〜〜〜〜 」

 

路面店で買ったジェラートの懐かしいシトロン味に感激し 

そして フランスパン という名のこの国風のバゲット は

( 明日の朝食用に求めたのだが ) ― 滅茶苦茶オイシかった !

 

      ・・・ これってホントに バゲット???

 

      なんか お菓子みたい〜〜〜

 

「 ん〜〜〜〜  ねえ ジョー。

 この国の食べ物は ホント美味しいわねえ〜〜 

「 あ そうかな? うん   くだものとかも美味いよぉ 」

「 そうよね!!  イチゴとか大きくて甘くて すごい!

 もうね、お菓子かと思ったわ〜〜〜 」

「 パンもさあ 今後 菓子パン とか紹介するよ。

 めろんぱん とか 胡桃チーズ とか チョココロネ とか。

 女子に人気さ 」

「 メロンぱん???  パンにメロンが 入ってるの??? 

「 え〜〜〜   あ そう思うかあ・・・

 コンビニにもあるからさ 買って帰ろうよ 美味しいよ〜   」

「 メロンのパンが??  ふうん ・・・ 楽しみ〜〜〜 」

「 うふふふ〜〜〜 」

「 ―  あ!!!!  ねえ ここは 何屋さん??? 」

 

   タタタタタ −−−−    ぴた。

 

彼女はある店のショーウィンドウに張り付いてしまった。 

 

   そこは  ジョーでも知ってる老舗の超有名・和菓子店。

 

  ―  フランソワーズは 和菓子 と出会ってしまったのだ。

 

ぴかぴかに磨かれたショー・ケースの中には ふっくりした梅花やら

細石みたいなミモザ   香りたかい和水仙  そして 季節先取りの桜花 ・・・

そんな 花々が華麗に咲き誇っていた。

 

「 ・・・ ジョー ・・・ これは  なあに???

 お花 よね?  ・・・ アクセサリー? それとも 陶器?? 」

「 え  あ〜〜 これ お菓子さ。 和菓子だよ 」

「 え  おかし・・・? スウィーツ なの??

 もしかして ・・・ 食べられる  の ??? 

「 ウン。 高級なのって食べたことないけどさ ・・・

 これ だいたい餡子でできてるんだ  」

「 え!?  アンコって あのお饅頭の中に入ってる黒くて甘い

 ・・・ アレ? 」

「 うん。  これさ〜 ぜんぶいっこいっこ手作りなんだって。

 地元紹介の番組で見たこと あるんだ  」

「 ・・・ そう ・・・ ! 」

「 買ってかえる?  梅のとか 丸っこくてカワイイよね 」

「 ・・・ 今日は やめておくわ。

 わたしの舌が もっとこの国のスウィーツに慣れてから

 頂くことにします ・・・ 」

「 あ〜〜〜 もっと気楽に楽しんでいいんじゃない?

 和菓子っていろいろあるよ〜〜〜

 ぼく どらやき とか たいやき 好きだな〜 」

「 どら やき? どら ってなあに??

 たいやき?? タイってお魚の鯛をやいたの?? 」

「 あは  違うよぉ  たい焼きなら熱々焼きたて〜〜を

 売ってるから食べようよ  こっちさ 

「 え え???   ジョー 知ってるの? 」

「 ウン。  あは  ぼくはこの辺り よ〜くふらふらしてたんだ。

 もっとも 裏道 だけどね〜〜  さ こっち 」

「 え ええ・・・ 」

手を繋いで 裏道をゆくと ―  行列が見えてきた。

「 あそこ さ 」

「 ?? お店 なの? なんか普通のお家みたいだけど 」

「 ちっちゃな店でさ オヤジさんが一人で焼いてるんだ。

 でもね め〜〜〜〜っちゃウマい! 」

「 たいやき ・・・? 」

「 そ! 値段もリーズナブルだしね さあ 並ぼうよ 」

「 ええ  ・・・ ね いろんなヒトがいるのね 」

フランソワーズは周りをこそ・・・っと見回している。

「 うん ここはさあ 地元のヒトしか知らないんだ。

 あ  こんちわ〜〜〜  ども 」

ジョーは 振り向いて手を振ってるオバサンに ぺこり、とアタマを下げた。

「 ・・・ 知り合い? 」

「 あ〜 この店でよく会うだけだけどね 」

「 ふうん 

「 皆 そんなモンだよ  あ いくつ買おうか 」

「 え〜と  今日 ウチにいるのは ・・・ 」

指折り数える彼女を ジョーはにこにこ ・・・ 眺めている。

「 ・・・ なあに? 」

「 え あ ・・・ なんかいいよね〜〜〜

 家族の分 買ってかえろう〜〜〜っていうの 」

「 そ う??  普通じゃない? 」

「 ― 普通は ね。  あ 次だよ〜〜〜 」

「 わあ    ジョー!!! お魚が 焼けてる〜〜〜 

 ・・・ これが たいやき なの? 

 うわあ〜〜〜 いいにおい〜〜〜〜」

「 ぴんぽ〜〜ん♪  あ コンチワ〜〜〜 」

ジョーは たい焼き機を操っているオヤジさんに親しげに声をかける。

「 ・・・ おう 茶髪の兄ちゃん  久しぶりだなあ 」

「 えへへ  また来ちゃったデス 」

「 コンニチワ 」

フランソワーズは 習慣的に挨拶をしたが オヤジさんは

ちょっとびっくりした顔をみせた。

「 アリガトよ     お? べっぴんさんだねえ  カノジョさんかい? 」

「 ・・・ えへ 」

ジョーは泣き笑いみたいな顔で肩を竦めてみせた。

「 そっか〜〜    ま 頑張れよぉ〜〜 で 何匹? 」

「 あ 〜〜 えっと

 

ほっかほかの包を抱えて ―  帰りはゆっくり駅まで歩いた。

 

「 ん 〜〜〜〜  いいにおい〜〜〜〜〜  」

「 だね(^^♪  ホントはさあ 焼きてたが最高なんだよぉ 」

「 でも 皆と一緒に食べたいじゃない? 

 こんなに美味しそうなんだもの 

「 そだね ・・・ うん ウチで食べよう!

 熱々にして食べようよ。  

「 うふふ ・・・   ねえ どうしてお魚の形なの? 」

「 え ・・・  さ  さあ〜〜〜〜〜???

 ムカシっからこうなんだ 鯛焼き って 

「 ふう〜〜ん  」

「 あ   ごめん ・・・ オシャレしてるのに

 鯛焼きなんて ・・・ 」

「 え 〜〜 どうして??

 わたし すご〜〜〜く楽しいわ。

 ねえ ねえ ジョーお勧めのスウィーツとかスナック、教えて! 」

「 あ ・・・ うん ・・・ いいけど 」

「 けど?? 」

「 あの すげ〜庶民的なもん ばっかだけど  ― いい ? 

「 うふふふ  いいわよぉ〜〜〜

 だって わたしだって   < しょみん >  だもん。

 今日のこの恰好は グレート伯父さま にお付き合いしたから よ 」

「 ―  ぼく 好きだよ 

「 え??  そうね〜〜 鯛焼きは美味しいわねえ〜〜 」

 

      クスクスクス −−−  

 

「 あ 待って〜〜〜 」

ジョーは 笑いつつ駆けてゆく彼女を 慌てて追いかけ始めた。

 

Last updated : 02.21.2023.               index      /     next

 

***********   途中ですが

他愛もない 甘いモノ 話 ・・・・・ これ平ゼロ93 ですな

ガイジンさんは どら焼き とか好きな方 多いですにゃ☆